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【騒音問題シリーズ第1回】海外で実際に起きている“ピックルボール騒音トラブル”── 人気拡大の裏で見えてきた課題とは? ──

ピックルボールの人気は北米を中心に爆発的に広がっています。
その勢いは、公園が朝から夕方までラリー音で賑わうほど。
でも、にぎやかさの裏で少しずつ大きくなっているのが “騒音の問題” です。

「カコンッ」という軽快な音が、楽しいはずなのに、
住宅のすぐそばにあるコートだと意外と響いてしまう——。
そんなギャップから、いま各国でさまざまな動きが起きています。

今回はシリーズ第1回として、
海外で実際に報じられた“騒音トラブル・訴訟・規制”をまとめて紹介します。


1. アメリカで相次ぐトラブルと対応

ピックルボール発祥国のアメリカでは、
人気の上昇とともに「音をめぐる衝突」が最も顕著に表れています。

住民が自治体を訴えるケースも

KPBS(公共放送)
🔗 https://www.kpbs.org/news/quality-of-life/2023/09/05/homeowners-are-increasingly-taking-legal-action-over-pickleball-noise

サンディエゴ近郊のカールスバッドにある住宅コミュニティ「シークリフ」では、
テニスコートにピックルボール用のラインが引かれたことをきっかけに、住民から強い苦情が出るようになりました。

コートはある住民の寝室からわずか約18メートル。
そこから毎日のように「カン、カン、カン」という音が長く響きつづけ、

  • 多い日は 1日8時間ほど鳴りっぱなし
  • 週7日続くこともある
  • 夜勤の在宅勤務の女性は 日中に眠れなくなる
  • 仕事中も集中できず、ノイズキャンセリングが手放せない
  • 家にいても落ち着けず、外へ避難する日も

という状態になっていきました。

管理組合と何度も話し合い、調停も試みましたが改善されず、
女性はついに 「これ以上は生活がもたない」 として訴訟に踏み切りました。
訴えでは、コートでのピックルボール禁止や損害賠償を求めています。

KPBS の取材では、このケースは特別なものではないとされています。
取材に応じた弁護士のニコラス・キャプリンは、
これまでに 25件以上のピックルボール関連の紛争を担当した と話しています。
また、騒音の科学的な測定は専門家の領域であり、
音響コンサルタントのランス・ウィリスは 約80件の騒音調査を行ってきた と述べています。


公園のピックルボール利用を“恒久禁止”へ

ABC News(2025)
🔗 https://abcnews.go.com/US/california-town-moves-ban-pickleball-city-park-noise/story?id=127676467

カリフォルニア州の海沿いの街 Carmel-by-the-Sea(カーメル・バイ・ザ・シー) では、
住宅に近い公園で続いてきた騒音問題を受け、
「公園でのピックルボールを全面的に禁止する」 条例案が提出されました。

この公園では以前から、近隣住民から

  • 「寝室まで打球音が響く」
  • 「家にいても落ち着けない」

といった苦情が相次いでおり、
市は 時間制限や静音器具の提供などの対策 を2年間続けてきましたが、
十分な改善が見られなかったと報じられています。

市議会は、住民からの継続的な苦情や、
音が住宅に反響しやすい地域環境を踏まえて、
「地域の静けさを守るためには避けられない判断だった」 と説明しています。

公園でのピックルボールそのものを禁止する措置は、
アメリカ国内でも注目される動きで、
騒音を理由に“公的空間でのプレーを認めない”という強い対応 を取った例として報道されています。


住宅地のコートで住民10名が集団訴訟

FOX13 News
🔗 https://www.fox13news.com/news/hillsborough-county-may-pause-new-pickleball-courts-neighbors-sue-over-nonstop-noise

フロリダ州ヒルズボロ郡の住宅地では、
もともとのテニスコートをピックルボールに転用したことがきっかけで、
「毎日ずっと音が続く」「家の中でも落ち着けない」 といった苦情が相次ぎました。

近隣に住む 10名の住民が、管理組合(HOA)を相手取り訴訟を起こす までに発展し、
中には

  • 「生活に支障が出ている」
  • 「周辺住宅の資産価値に悪影響が出る」

と主張する住民もいます。

郡でもこの問題が取り上げられ、
住宅から一定距離以内の新しいピックルボールコート建設を
一時停止する案が提出されるほど、地域全体の課題として広がっています。
最終的にこの案は否決されましたが、郡は騒音や訴訟リスクの調査を進める方針で、
今後の規制づくりが検討されています。

住宅街の静けさと、人気スポーツの活気が正面から衝突した、
まさに象徴的なケースといえます。


市長自ら“騒音公害”として提訴

KCTV5(2022)
🔗 https://www.kctv5.com/2022/05/23/lawsuit-mission-woods-couple-says-noise-converted-pickleball-courts-repetitive-nuisance/

カンザス州ミッションウッズでは、
住宅に隣接するテニスコートがピックルボール用に改装されたことをめぐり、
市長自身とその妻が、コートを運営するミッションヒルズカントリークラブを相手取り訴訟を起こすという異例の事態になりました。

夫妻の自宅はコートから わずか約90フィート(約27m)
「鋭い打球音が繰り返し響き、静かな生活環境が損なわれている」として、
コートの使用差し止めなどを求めています。

住民からも

  • 「音が反響して落ち着けない」
  • 「プライバシーが保てない」

といった声があり、騒音と混雑が生活に影響していると指摘されています。

自治体トップが直接提訴に踏み切ったこのケースは、
住宅街の静けさとスポーツの活気が真正面からぶつかった例として、注目を集めた出来事です。


■ 静音パドルの“使用義務化”へ

Los Angeles Times(2025)
🔗 https://www.latimes.com/california/story/2025-04-11/quiet-paddles-now-required-at-laguna-beach-pickleball-court-due-to-noise-complaints

カリフォルニア州ラグナビーチ市では、
近隣住民から寄せられた騒音の苦情を受け、
公園でピックルボールを行う際に 静音パドルの使用が義務化 されました。

対象となったのは、市内の Lang Park(ラング・パーク) のコートで、
従来のパドルでのプレーは禁止され、静音パドルの使用が義務 となりました。
この条例は市議会で採択され、2025年4月から施行 されています。

静音パドル義務化の理由として、
近隣の高齢者住宅に住む住民から

  • 「打球音が大きく、生活に響く」
  • 「安眠できない」

といった声が続いていたことが挙げられています。

市としては、住民からの苦情への対応として、
器具の使用方法にまで踏み込んだ形での対策となりました。


夜間プレーを禁止する動きも

FOX 13 Seattle
🔗 https://www.fox13seattle.com/news/seattle-pickleball-crackdown-noise-complaints

シアトルでは、
夜遅くまで続くプレー音への苦情が増え、
市はローレルハースト、マウントベーカー、ギルマンの
3つの公園で 利用時間を短縮 しました。

ギルマン・パークでは、
以前の 午前4時〜午後11時30分 から、
午前7時〜午後10時 に変更。

市は、寄せられた苦情と騒音条例違反の可能性を理由に
この措置を決定したと説明しています。


2. アメリカ以外にも広がる“騒音の課題”

「アメリカ固有の問題なの?」と思われがちですが、
実は周辺国でも似たような悩みが生まれています。

カナダ:住民が「耐え難い」と苦情

Insauga
🔗 https://www.insauga.com/unbearable-sound-of-outdoor-pickleball-to-be-mitigated-in-ontario-city/

オンタリオ市では、
屋外コートの打球音が「耐え難い」として住民から苦情が寄せられ、
市が対応策の検討を始めました。

市では現在、

  • 防音パネルの設置
  • コート数の削減

などの対策案が挙がっていると報じられています。


カナダ:州レベルで「騒音ガイドライン」を作成

BCRPA × Pickleball BC
🔗 https://www.bcrpa.bc.ca/media/443591/bap-acoustics-pickleball-bc-noise-guidelines-final.pdf

カナダ・ブリティッシュコロンビア州では、
屋外ピックルボールの騒音に関する技術的なガイドラインが公表されました。

この文書には、

  • 住宅との距離
  • 防音フェンスや盛土などの遮音対策
  • コート周辺で目指すべき音のレベル(例:住宅境界で約50 dBA)

といった項目が、具体的な数値とともにまとめられています。

州内の公園や自治体が、
コートの新設や改善を検討する際の参考資料として作成されたもので、
屋外コートによる騒音をどのように抑えるかを技術的に示す内容になっています。


カナダ:都市部では“過度の騒音”として報道

Global News
🔗 https://globalnews.ca/news/10917249/halifax-pickleball-excessive-noise/

カナダ・ノバスコシア州ハリファックスでは、
住宅に近い公園で行われるピックルボールの音が
“過度な騒音” として取り上げられるケースが出ています。

住民からは、

  • 「打球音が一日中続く」
  • 「家の中でも気になる」

といった声が寄せられ、
市に苦情が入る状況が続いていると報じられました。

市はこれまで、

  • プレー可能時間の制限
  • 硬いプラスチックボールではなく、フォームボール(柔らかいボール)の使用を求めること

などの対策を試してきましたが、
騒音をめぐる課題はなお続いていると報じられています。


オーストラリア:“公式の騒音調査”が行われたケース

Tweed Shire Council(ニューサウスウェールズ州)
🔗 https://www.yoursaytweed.com.au/ktcpickleball

住宅地に近い Kingscliff テニスクラブでは、
ピックルボールの打球音が問題となり、市が正式な騒音調査と住民アンケートを実施しました。

調査では、

  • 昼間の許容基準を14〜15デシベル上回る
  • 音が「非常に耳につきやすい衝撃音」と分類
  • 対策をしても改善が難しく、基準を守るには約300メートルの距離が必要

と結論づけられました。

住民からは
「家の中でも響く」「窓を開けられない」などの声が寄せられ、
市は 2024年8月にピックルボールの利用を停止
今後この施設では行わない方針が示されました。

市は現在、住宅から離れたより適した場所での新設を検討しています。


3. 騒音トラブルが起きやすい理由

海外の事例を見ていくと、トラブルが生まれやすい背景にはいくつか共通点があります。

  • 打球音が鋭く、反響しやすい
  • 公園やコートが住宅に近い
  • 利用者が増え、朝から晩まで使われる
  • 複数コートで同時にプレーする機会が増えている

つまり 「音そのもの」よりも、
回数・反響・距離 が重なったときに問題が大きくなる
という構造が見えてきます。

国によって対応の温度差はありますが、
ピックルボールが広がるほど “音への配慮” が重要になる傾向は共通している と言えるでしょう。

4. おわりに

ピックルボールは、年齢を問わず楽しめる素晴らしいスポーツです。
その楽しさの一方で、住宅地に近い場所では“音の響き方”が大きな焦点になっています。

今回まとめたように、海外ではすでに

  • 訴訟
  • 利用時間の制限
  • 静音器具の義務化
  • 騒音ガイドラインの整備
  • 公式の騒音調査
    など、さまざまな対応が始まっています。

これらの動きは、
「スポーツを楽しむ人たち」と「静かな生活を求める住民」
のあいだで、どう折り合いをつけていくかという課題を映し出しています。

日本でもコートが増えていくなかで、
海外の事例は大きな学びになるはずです。

※記事内の挿入画像はイメージです。

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