前回の記事では、アメリカで実際に起きている
ピックルボールの“騒音トラブル”を紹介しました。
読みながら、
「そんなに音って問題になってるの?」
「じゃあ、海外ではどんな対策をしてるんだろう?」
と感じた人も多いはずです。
実はアメリカでは、前回紹介したような騒音トラブルが増える中で、
「どうすればもっと静かに遊べるのか?」という視点が強く求められるようになっています。
その流れの中で注目されているのが、
打球音を抑えるために開発された “静音パドル” や “静音ボール” といった専用の用具。
その“静音の基準づくり”を進めているのが、
アメリカの競技統括団体 USA Pickleball(ユーエスエー・ピックルボール) です。
今回の記事では、USA Pickleballが公式に発表している
「静音カテゴリ(Quiet Category)」とは何なのか?
どんな用具が静音として認められているのか?
を、丁寧に整理していきます。
1. USA Pickleballってどんな団体?
まず知っておきたいのが、
USA Pickleball(ユーエスエー・ピックルボール)とはどんな団体なのか?
というポイントです。
USA Pickleballは、アメリカにおけるピックルボールの
公式な全国統括団体 で、
非営利の組織として競技の健全な発展を支えています。
この団体は、ピックルボールの“中心的な役割”を担っていて、
- 全国大会の公認
- 用具や施設の認定
- 審判の育成
- 教育・学習リソースの提供
- そして「公式ルール」の管理
といった、スポーツの基盤づくりを幅広く行っています。
その活動のひとつが
用具の承認制度 です。
「このパドルは公式ルールに合っているの?」
「大会で使ってもいいもの?」
そんな疑問にこたえるために、USA Pickleballは
基準に合格したパドルやボールを一覧で公開しています。
🔗 https://equipment.usapickleball.org/
このデータベースでは、
公式ルールに適合した用具だけが登録されており、
プレイヤーや施設側が“安全に選べる指標”として活用されています。
2. 静音カテゴリ(Quiet Category)は、なぜ作られた?
USA Pickleballが「静音カテゴリ(Quiet Category)」を発表した背景には、
アメリカで増えている 屋外コートの騒音トラブル があります。
公式発表では、この静音カテゴリについて
「プレー時の打球音を減らすためのカテゴリー」
と説明されています。
🔗 https://usapickleball.org/news/usa-pickleball-announces-quiet-category-for-pickleball-products/
● どんな経緯でつくられたの?
USA Pickleballは、静音カテゴリの導入について、次のように説明しています。
- ピックルボール人口が急増した
- 屋外コートの利用が広がり、音に関する課題が増えた
- それにあわせて 15ヶ月間の音の調査 を行った
- 音響の専門家と協力しながら 検討を進めた
つまり、
プレイヤーが増えたことで「音が気になる」と感じる地域が出てきたため、
USA Pickleballが音に関する調査と検討を重ね、
「より静かに遊べる用具を紹介する枠」を設けた、という流れです。
● 静音カテゴリの用具は、どれくらい静か?
USA Pickleballの公式発表では、静音カテゴリの用具について
従来の用具と比べて、音の負担を“おおむね50%以下”に抑えた製品を推奨する
という記載があります。
これは、
静音カテゴリが “音が半分程度まで抑えられた用具” を基準として紹介する枠組みである
という目安を示すものです。
3. どんな製品が「静音カテゴリ」になるの?
USA Pickleballは、静音カテゴリを
パドルだけに限定していません。
公式発表では、静音カテゴリの対象として
- パドル
- ボール
- パドルカバー(後付けの静音パーツ)
- コート用の防音スクリーン
など、幅広い「音を抑えるための用具」が挙げられています。
🔗 https://usapickleball.org/news/usa-pickleball-announces-quiet-category-for-pickleball-products/
また、静音カテゴリに該当する用具は
USA Pickleball の公式データベースの「Quiet Category」で確認できます。
🔗 静音カテゴリ用具一覧
https://equipment.usapickleball.org/acoustic-equipment/
ここには実際に、
- 静音パドル
- 静音ボール
- パドルカバー
といった用具がカテゴリ別に掲載されています。

4. 静音パドルの実例:「OWL」はどう説明されている?
USA Pickleballが最初に「静音カテゴリの製品」として認定したのが
OWL(OWL Sport) です。
● OWLの音の特徴(公式発表より)
- 600Hz未満の周波数
- 80dB未満の音量
● 一般的なパドル(比較として公式が提示)
- 1,100〜1,200Hz
- 85dB以上
この比較から、OWLは
「音の高さ(周波数)」も「音量(デシベル)」も大きく抑えられている
ことがわかります。
● OWLOWLパドルの特徴(公式発表より)
OWLは owlpaddle.com で購入でき、モデルは4種類。
主な特徴は次のとおりです。
- 操作性が高い
- 耐久性がある
- 13mm/16mmの厚み(ロングハンドル仕様)
- 振動を抑えて腕や肘の負担を軽減
- ヘッドが重すぎないバランス設計
- スイートスポットが広い
- グラフェンやナノ技術を使ったカーボン構造
- 独自の「Acoustone™」シースを採用
静音性だけでなく、
プレーのしやすさや耐久性にも配慮されたパドル
として紹介されています。
5. 大会で使える「承認用具」とは別物
USA Pickleballには、今回の「静音カテゴリ」とは別に、
大会で使用できる公式用具(Approved Equipment) の制度があります。
大会でパドルを使うためには、
USA Pickleballが公開している 「承認パドル一覧」 に載っていることが条件です。
🔗 承認パドル一覧
https://equipment.usapickleball.org/paddle-list/
● OWLは“レクリエーション用”として認定
静音カテゴリの第1号として認定された OWL について、
USA Pickleballの公式発表では次のように書かれています。
“sanctioned for recreational use”(=レクリエーション用途として認定)
つまりOWLは、
- 静音カテゴリの基準には合格している
- 大会用の承認パドルとは別枠で評価されている
という位置づけです。
6. 静音カテゴリは“屋外コートで採用され始めている”
静音カテゴリ自体は「用具の区分」ですが、
アメリカではすでに自治体が
“静音パドル義務”として採用し始めています。
代表例がカリフォルニア州ラグナビーチ市。
市の公式ページでは、
Lang Park が 静音パドル義務のコート と明記されています。
🔗 https://www.lagunabeachcity.net/government/departments/recreation/pickleball
つまり、
静音カテゴリは“使う・使わない”ではなく、“採用される時代が来ている”
という流れが見えてきます。
まとめ
静音カテゴリは、
「もっと気持ちよくピックルボールを楽しめる環境をつくるには?」
という発想から生まれた取り組みです。
プレイヤーが楽しむことと、周囲の生活環境の両方を大切にしようとする、
アメリカの“配慮のかたち”とも言えます。
静音パドルや静音ボールが登場したことで、
公園でのプレーやレクリエーションでの遊び方が
より続けやすくなる可能性も広がっています。
ピックルボールが、
もっと多くの人にとって“やりやすく、続けやすいスポーツ”になるように。
そのヒントをこれからも探っていきます。

