ピックルボールは、年齢や性別に関係なく楽しめるスポーツとして、いま世界中で人気が広がっています。
それに合わせて、ピックルボールを科学的に分析する研究も少しずつ増えてきました。
今回はその中でも、女子シングルスに注目した貴重な研究 を紹介します。
この研究は、2025年に学術誌 J Funct Morphol Kinesiol に掲載されたもので、
PPAツアーの試合映像を使って 女子シングルスのプレーを細かく数値化した分析 です。
- サーブはどれくらい有利なのか
- どんなミスが起きやすいのか
- どの位置でポイントが終わりやすいのか
こうした試合の流れを、実際のデータから明らかにしています。
この記事では、その研究結果をできるだけわかりやすくかみ砕きながら、
女子シングルスならではのプレーの特徴 を丁寧に解説していきます。
女子シングルスではサーブ側が少しだけ有利
研研究によると、女子シングルスでは
- サーブ側がポイントの55.1%を獲得
- レシーブ側は44.9%
という結果が出ています。
ピックルボールは、テニスのようにサーブでいきなり攻撃できるスポーツではありません。
それでも サーブ側が少しだけ多くポイントを取っている のは興味深いところです。
この数字は、
「最初の一球を自分から打てると、試合の流れをつかみやすい」
ということを示していると考えられます。
サーブで落ち着いて入り、ラリーのリズムを作れることが、
わずかながらポイントにつながっている可能性があります。

63.7%のポイントは“ミスで決着”
この研究でとても大きなポイントだったのが、
試合の63.7%が、選手どちらかの“ミス”で終わっていたこと。
つまり、女子シングルスでは
相手を強烈なショットで打ち抜くよりも、
ラリーの途中で出たミスがポイントを左右している
という展開が多いということです。
🔍 じゃあ、どんなミスが起きやすいの?
研究では、ミスにも“特徴”があることが分かりました。
- ラリーが短いとき → フォアハンドでのミスが多い
- ラリーが続き始めた中盤 → バックハンドでのミスが増える
つまり、
・打ち合いの入りたてはフォアが崩れやすい
・長く続くとバックに負担がかかりやすい
という傾向です。
🏆 勝敗を左右したのはこの3つ
数字をもとに整理すると、
女子シングルスでは次の3つがとても大事だと分かります。
✔ ボールを安定して返す力
✔ 無理をしすぎないショット選び
✔ ミスを少なくする試合運び
相手に対し派手に決めるよりも、
“コツコツ返してミスを抑えるプレー” が大きく影響していました。

ポイントが決まりやすいのは「前」と「後ろ」
研究では、ポイントがどの位置で終わったのか も分析されています。
その結果がこちら
- ネット近く(キッチンライン付近)で決着したポイント:35.8%
- ベースラインより後ろの深い位置で決着したポイント:38.6%
合わせると 全体の7割以上 が、
ネット際(前)
後ろの守備位置(後ろ)
このどちらかでポイントが終わっていました。

🔍 どういう意味?
女子シングルスでは、
✔ ネット際で攻めるシーン
✔ 深い位置で守りながら返すシーン
この“前後の移動”が、試合の大きな流れを作っているということです。
左右のラリーよりも、
前に出るのか、後ろで守るのか──そのポジション争いが勝敗に直結している
というのが、このデータから読み取れます。
前後のポジショニング争いが勝敗に直結 しているという結果です。

女子シングルスは「戦略×安定感」で組み立てるスポーツ
今回の研究から見えてきたのは、
女子シングルスには “独特のリズム” や “戦い方のクセ” があるということです。
プレーを見ていくと、女子シングルスは
前に出て攻める場面と、後ろで粘る場面のどちらも多いスポーツ
だということがデータから分かります。
ネット近くとベースライン後方でポイントが終わるケースが特に多く、
いわば 前後に揺れる二極構造の試合展開 が特徴です。
これはテニスのように後ろで打ち合う時間もあれば、
パデルのようにネット際で一気に勝負がつくこともある……
“ハイブリッドな戦い方” と言えるかもしれません。
さらに面白いのは、ミスが出やすいタイミングまでハッキリしているところ。
- ラリーが短いうちは フォアハンドが崩れやすい
- ラリーが長くなると バックハンドに負担がかかる
というように、
状況によって弱点が変わるのも女子シングルスの特徴です。
また、男子シングルスのデータと比べると、
男子はネット付近でポイントを終える割合が高く、
女子はベースライン後方からストロークでポイントが決まる場面が多い、
という違いも見えてきます。
そのため女子シングルスでは、
バックハンドを含めたストロークの安定性がより重要 になっていることが分かります。
ここで大事なのは、
「女性だからこう」ではなく、
あくまでも “女子シングルスという競技カテゴリーが自然に生み出している特徴” という点です。
🔍 この研究でわかった女子シングルスのポイント
- ただミスが多いのではなく、ラリーの流れによって崩れやすいショットが変わる
- 試合は 前後のポジション争いが中心
- ネット勝負も後方戦も多く、ハイブリッドなスタイル で進む
- 男子と比べるとネットプレーの割合が少なく、ストローク勝負の重要度が高い
ピックルボールはまだ研究が少ない競技ですが、
今回の分析は「女子シングルスって実はこういうスポーツなんだ」という気づきを与えてくれる、とても興味深い内容でした。
これから女子プレイヤーが増えていく中で、
こうしたデータは練習や試合運びを考えるヒントとして役立っていきそうです。
