ピックルボールといえば、専用コートでパドルを使い、穴あきのボールを打ち合うスポーツです。
特徴的なルールには、サーブ後の返球を両チームがそれぞれ1回ずつバウンドさせるツーバウンスルール、ネット付近でのボレーを制限するノンボレーゾーン、11点先取(15点、21点の場合もあり)・2点差勝利などがあります。
テニスよりコートは小さく、初心者でも始めやすいのが魅力です。
そんなピックルボールですが、海外では、遊ぶ場所や参加する人、イベントの目的に合わせて、少し変わった形でも楽しまれています。
たとえば、砂浜や芝生で楽しむためにバウンドをなくしたピックルボール。
車いすプレイヤーも参加しやすいように、バウンド回数を調整したピックルボール。
2人でも練習しやすいように、半面だけを使うピックルボール。
暗い空間で、光るラインやブラックライトを使って楽しむピックルボール。
同じピックルボールでも、目的が変わるとルールや楽しみ方も変わります。
今回は、海外で実際に紹介されている“変わり種ピックルボール”の事例をご紹介します。
砂浜や芝生で遊ぶために生まれた「Sandy Pickle」
最初に紹介するのは、砂浜や芝生向けに考えられたピックルボールの派生ルール、Sandy Pickleです。
通常のピックルボールは、ハードコート上でボールをバウンドさせながらラリーを続けます。
しかし、砂浜や芝生ではボールがきれいに弾みません。足元も安定しにくく、通常のコートと同じ感覚では動きにくくなります。
そこでSandy Pickleでは、ルールそのものが砂浜・芝生向けに調整されています。
一番大きな違いは、ボールをバウンドさせないことです。
Sandy Pickleは、すべてのショットを空中で返す「ボレーのみ」のゲームです。
ピックルボールのパドルとボールを使いながら、感覚としてはビーチバレーやバドミントンのように「落とさずにつなぐ」遊び方に近くなります。
動画で見ると、通常のピックルボールよりも、空中でテンポよくボールをつないでいく雰囲気が分かりやすいです。
Sandy Pickleの主な特徴
Sandy Pickleでは、通常のピックルボールと比べて、次のような点が変わっています。
- ボールはバウンドさせず、すべて空中で返す
- コートは通常より小さめ
- ネットは、プレーしている中で一番背の高い選手と同じくらいの高さに調整する
- ネット付近では、下向きのスパイクが禁止(ノースパイクゾーン)
- ダブルスでは、相手コートへ返す前に1回だけペアが触ってもよい(ワンパス)
- 得点は11点先取、2点差で勝利
コートが小さめなのは、砂浜や芝生ではハードコートほど速く動けないためです。
広い範囲を走り回るというより、限られた範囲の中でボールを落とさずにつなぐイメージです。
ネットが高めに設定されるのも、ラリーを続けやすくするためです。
ボレーだけで打ち合うため、通常のネット高のままだと強い打ち下ろしが決まりやすくなります。そこで、ネットを高くして、背の高い選手のスパイクが有利になりすぎないようにしています。大会では約1.8mが標準の高さとされています。
また、ネットの両側には「ノースパイクゾーン」が設けられています。
このエリアでは、下向きに強く打ち込むスパイクは禁止です。ボールは上向き、または水平に近い軌道で返す必要があります。
ココが面白い!ダブルスでは、ペアで1回つないでから返せる
Sandy Pickleで特にユニークなのが、ダブルスのワンパスです。
通常のピックルボールでは、ボールを打ったら基本的に相手コートへ返します。
一方、Sandy Pickleのダブルスでは、相手コートへ返す前に、1回だけペアがボールに触ってもよいルールがあります。
たとえば、
- 1人目がボールを受ける
- ペアが打ちやすい位置に軽く上げる
- 2人目が相手コートへ返す
という流れです。
ビーチバレーの「レシーブからトス」のようなイメージに近く、ミスショットになりそうなボールでもペアが助けられるため、ラリーが続きやすくなります。
車いすピックルボールは、同じコートで一緒に楽しむための工夫
次に紹介するのは、車いすピックルボールです。
これは「変わり種」というより、より多くの人がピックルボールに参加できるようにするためのルール調整です。
大きな違いは、バウンド回数です。
通常の立位プレイヤーは、基本的に1バウンドまでに返球します。
一方、車いすプレイヤーは、ボールが2回バウンドするまでに返球できます。3回目のバウンドでフォルトになります。
車いすでは、方向転換や移動に時間がかかる場面があります。
そのため、2バウンドまで認めることで、ラリーに参加しやすくしているのです。
主なポイントをまとめると、次の通りです。
- 車いすプレイヤーは2バウンドまで返球できる
- 3回目のバウンドでフォルト
- 車いすは身体の一部として扱われる
- サーブ時は、後輪がベースラインの後ろにあり、サイドラインやセンターラインの延長線内に収まっている必要がある
このような調整によって、立位プレイヤーと車いすプレイヤーが同じ競技の中でプレーしやすくなります。
ピックルボールはもともと、年齢や運動経験に関係なく始めやすいスポーツとして広がってきました。
車いすピックルボールは、その「誰でも楽しみやすい」という特徴をさらに広げる存在です。
2人でも練習しやすい「スキニーシングルス」
ピックルボールはダブルスで楽しまれることが多いスポーツですが、いつも4人そろうとは限りません。
2人だけでゲーム形式の練習をしたいときに使いやすいのが、スキニーシングルスです。
スキニーシングルスは、1対1で行う変則的なシングルスです。
通常のシングルスのようにコート全面を使うのではなく、ネットを挟んでそれぞれ片側半面だけを有効エリアにしてプレーします。
使う半面は、ラリーごとに変わります。
そのため、ある場面ではクロスコートで打ち合い、別の場面では正面同士で打ち合う形になります。
スキニーシングルスにはいくつかの遊び方がありますが、分かりやすい方法のひとつが、自分の得点で立つサイドを決めるルールです。
- 自分の得点が偶数なら右側
- 自分の得点が奇数なら左側
- サーブ側もレシーブ側も、それぞれ自分の得点で立つ場所を決める
- ラリー中に有効なのは、それぞれが立っている半面だけ
- 使っていない半面に入ったボールはアウト
たとえば、Aさんが2点、Bさんが3点の場合、Aさんは右側、Bさんは左側に立つため、クロスコートで打ち合う形になります。
Aさんが4点、Bさんが6点の場合は、どちらも右側に立つため、正面同士で打ち合います。
得点ルールは通常のピックルボールと同じで、11点先取・2点差勝利、得点できるのはサーブ側のみです。
全面シングルスほど走り回らずに、2人でもゲーム感覚でプレーできるのがスキニーシングルスの魅力です。
暗闇で光る「Glow Pickleball」
ルールを大きく変えるのではなく、プレーする空間を変える事例もあります。
それが、Glow Pickleballです。
Glow Pickleballは、ブラックライトや蛍光ライン、光るボールなどを使って、暗い空間で楽しむイベント型のピックルボールです。
Sandy Pickleのようにバウンドやネットの高さを変えるわけではなく、基本的なルールはそのまま。
コートやボールの見え方を変えることで、いつものピックルボールとは違う雰囲気を楽しめます。
主な特徴は、次の通りです。
- ブラックライトを使う
- 蛍光色やネオンカラーのラインを使う
- 光るボール、または暗い場所でも見えやすいボールを使う
- 交流イベントや体験会として取り入れやすい
競技としてのピックルボールを大きく変えるというより、ピックルボールをイベントとして楽しみやすくするアレンジです。
友人同士の集まり、初心者向けの体験会、施設の企画などにも向いており、スポーツに慣れていない人でも参加しやすい雰囲気を作りやすいのが魅力です。
ピックルボールの入口は、もっと自由に作れる
海外の変わり種ピックルボールに共通しているのは、人や場所に合わせて、楽しみ方を調整しているという点です。
砂浜では、バウンドしにくい環境に合わせる。
2人なら、半面だけで遊べる形にする。
暗い空間では、光るラインやボールでイベント感を出す。
車いすプレイヤーには、参加しやすいルールを用意する。
これは、公式ルールを否定するものではありません。
むしろ、公式ルールにたどり着く前の入口を増やす工夫といえます。
ピックルボールは、競技としても、レクリエーションとしても楽しめるスポーツです。
だからこそ、場所や参加者に合わせて始め方を変えられる柔軟さがあります。
日本でも、こうした柔軟な発想が広がれば、ピックルボールはもっと多くの人にとって身近なスポーツになっていくのではないでしょうか。
参考
Sandy Pickle 公式ルール・比較
https://www.sandypickle.com/sandy-pickle-pickleball-rules-comparison/
Sandy Pickle ルールPDF
https://www.sandypickle.com/wp-content/uploads/2022/06/SANDY-PICKLE-RULES-INSERT.pdf
USA Pickleball アダプティブ・車いすピックルボール
https://usapickleball.org/adaptive/
スキニーシングルス解説
https://www.playpickleball.com/what-is-pickleball-skinny-singles/
Glow Pickleball イベント解説
https://superlativeevents.com/glow-pickleball-black-light/
Glow-in-the-dark Pickleball イベント事例
https://letsgloball.com/
