ピックルボールは、年齢を問わず楽しみやすいスポーツとして広がっています。
小さめのコートで、専用ラケットを持ち、ネット越しにボールを打ち合う。
動きはシンプルに見えますが、その中には、歩く、止まる、向きを変える、目でボールを追う、手を動かす、相手に反応する、といった動きが含まれています。
アメリカでは、この特徴に注目し、パーキンソン病の人たちを対象にした研究も行われています。
もちろん、ピックルボールが病気を治すという話ではありません。
ただ、体を動かすきっかけや、人と一緒に楽しむ時間を作る運動として、どのような可能性があるのかが調べられています。
6週間、週2回のピックルボール研究
アメリカ・アリゾナ州で、パーキンソン病の人たちを対象にしたピックルボール研究が行われました。
参加したのは、症状が比較的軽い人から中程度の人まで、15人です。
研究では、参加者が6週間にわたってピックルボールに取り組みました。
回数は週2回、1回あたり1時間です。
体の状態は、ピックルボールを始める前、6週間のプログラムが終わった直後、さらに終了から1か月後に確認されました。
確認した内容は、握る力、歩く速さ、ふらつきにくさ、手先の動き、認知機能、パーキンソン病に関する質問票などです。
この研究は、「ピックルボールが楽しそう」という印象だけでなく、実際に続けたあとに体の動きや日常生活に関わる部分にどのような変化が見られるのかを調べたものです。
シャツのボタンを留める動きに変化
この研究で特にわかりやすいのが、シャツのボタンを留める動きです。
参加者は、シャツを着て、ボタンを留め、脱ぐまでの時間を測りました。
6週間のピックルボールが終わった時点で、かかった時間は平均で約20%短くなりました。
さらに、取り組みが終わってから1か月後には、35%以上短くなったとされています。
ボールを目で追う。
パドルを持つ。
相手の打ったボールに合わせて手を動かす。
体の向きを変えながら打ち返す。
ピックルボールには、こうした動きが自然に入っています。
そのため、手先の細かな動きや、目で見たものに合わせて体を動かす力に関わる可能性があります。
ただし、今回の研究は15人を対象にした小規模なものです。
すべての人に同じ変化が出るとは限りません。
「ピックルボールをすれば症状がよくなる」と言い切るのではなく、体の動きや日常動作との関係を探る研究のひとつとして見るのが自然です。
研究が始まったきっかけ
この研究の背景には、実際にパーキンソン病と向き合う人の気づきがありました。
ある参加者は、理学療法で行っていた運動と、ピックルボールの動きに似ている部分があると感じたと紹介されています。
そこから、ピックルボールを運動プログラムとして取り入れたら、体の動きや日常生活にどのような変化が見られるのかを調べる研究につながりました。
研究では、いきなり本格的な試合をするのではなく、準備運動、基本練習、軽い打ち合いを組み合わせて進められました。
ピックルボールは、競技として楽しめる一方で、練習の内容を調整しやすいスポーツでもあります。
そのため、参加者の体の状態に合わせながら、無理のない形で取り組みやすかったと考えられます。
運動を続けやすい理由
この研究では、6週間のプログラムが終わったあとも、参加者の一部が一緒にピックルボールを続けていると紹介されています。
ただ体を動かすだけでなく、同じ時間に集まり、相手とボールを打ち合う。
その形が、運動を続けるきっかけになっていました。
参加者からは、プレー中に病気のことを忘れられたという声や、もう一度競えることがうれしかったという声も出ています。
ピックルボールには、ラリーが続く楽しさがあります。
うまく返せたときの達成感もあります。
一緒にプレーする相手との会話もあります。
こうした要素があることで、運動が「やらなければいけないこと」ではなく、また参加したい時間になりやすいのだと考えられます。
始める前に確認したいこと
パーキンソン病の人がピックルボールを始めるときは、まず主治医に相談することが大切です。
ピックルボールでは、前に出る、横に動く、止まる、打ち返すといった動きがあります。
転びやすさや体のこわばりがある場合は、理学療法士に相談し、どのくらい動いてよいかを確認しておくと安心です。
始めるときは、いきなり長くプレーする必要はありません。
最初は短い時間にする。
プレー前に体を温める。
疲れたら休む。
水分をこまめに取る。
体調が悪い日は無理をしない。
こうした基本的な準備が大切です。
また、1対1よりも2人対2人の方が、ひとりで守る範囲が狭くなります。
最初は2人対2人で、休憩を入れながら楽しむ方が始めやすいです。
薬を飲んでいる場合は、体が動きやすい時間帯に合わせてプレーすることも勧められています。
ピックルボールは始めやすいスポーツですが、体の状態に合った形で行うことが前提です。
安全に続けるためには、「できる範囲で」「無理なく」「誰かと一緒に」始めることが大切です。
この研究で印象的なのは、ピックルボールが「上手な人だけのスポーツ」として扱われていないことです。
コートに立つこと。
相手とボールを打ち合うこと。
できた動きを少しずつ増やしていくこと。
そのひとつひとつが、体を動かすきっかけになり、人と関わる時間にもつながっています。
もちろん、医療的な効果を簡単に断定することはできません。
それでも、運動を「頑張らなければいけないもの」ではなく、「また参加したい時間」に変えられる可能性があることは、このスポーツの大きな魅力です。
ピックルボールは、勝ち負けや上達だけで語るスポーツではありません。
自分のペースで動けること。
誰かと同じ時間を楽しめること。
体を動かすことが、少し前向きな予定になること。
そこに、ピックルボールらしいやさしさがあるのだと思います。
参考
Cronkite News
Serving up hope: Pickleball shows promise in Parkinson’s therapy patients
https://cronkitenews.azpbs.org/2025/04/17/parkinson-therapy-patients-pickleball-studies-show/
Creighton University
Creighton faculty and students in Phoenix research pickleball’s effect on Parkinson’s
https://www.creighton.edu/news/creighton-faculty-and-students-phoenix-research-pickleballs-effect-parkinsons
Parkinson’s Foundation
10 Tips for Playing Pickleball to Stay Active with Parkinson’s
https://www.parkinson.org/blog/awareness/playing-pickleball
