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【騒音問題シリーズ第3回】ピックルボールの音問題はこう解決できる:海外自治体の対策から見える“日本で活かせるヒント”

第1回では「海外で実際に起きている騒音トラブル」、
第2回では「USA Pickleballの静音カテゴリ」を紹介しました。

シリーズ第3回となる今回は、さらに一歩踏み込み、

“実際に屋外コートではどんな音対策が取られているのか?”

を海外の自治体資料にもとづいて、具体例とともに整理します。

調べていくと、北米ではすでに

  • 静音パドルの使用を義務化する市
  • 住宅との距離基準を数値で示す自治体
  • 利用時間を短縮して運用する都市
  • 防音フェンスの「高さ・向き」までガイドライン化する例

など、“実際にルールとして動いている”対策が明らかになっています。


1. 屋外コートでは、すでに「音対策」が本格的に進んでいる


USA Pickleball の「静音カテゴリ(Quiet Category)」は本来、
用具を分類するための制度です。

しかし自治体はこれを参考にしながら、屋外施設の運用ルールとして

  • 静音パドルの義務化
  • 利用時間の制限
  • 防音フェンスやスクリーンの設置
  • コートと住宅の距離基準の明確化
  • 問題が解消しない場合の“場所の移転”

といった、生活環境と調和させる対策を具体的に進めています。


2. 自治体ルールの実例


①静音パドルを義務化した市(カリフォルニア州ラグナビーチ)

アメリカの自治体で最もわかりやすい例が、
第1回・第2回の記事でも触れた ラグナビーチ市 です。

市の公式ページにはっきりと、

Lang Park は静音パドルが必須である

と明記されています。

🔗Lang Park は静音パドル必須
https://www.lagunabeachcity.net/government/departments/recreation/pickleball

さらに、このルールは市の条例にも明記されています。

条例では、利用者は以下のどちらかを使う必要があります。

USA Pickleball が認めた静音パドル

または

同等の静音性能があるパドル用カバー

🔗 ラグナビーチ市の条例(該当条文が確認できます)
https://ecode360.com/42897490

ラグナビーチでは、住宅とコートの距離が近く、
以前から音の苦情が多かったため、

  • 防音フェンスの設置
  • 時間制限の導入

という流れで対策が強化されてきました。

それでも改善しなかったため、
“音の出にくいパドル(または静音シート)の使用を義務づける”
という具体的なルールを、条例として正式に採用しています。

後付けの静音シートとは、、、

※画像参照:USA Pickleball 静音カテゴリー一覧:パドルカバー/スリーブ/オーバーレイ


②時間制限で調整するケース

屋外コートでできる対策のひとつが、「使える時間をしぼる」=時間制限 です。
これは、朝・夜の静かな時間帯に音が響かないようにするため、多くの自治体が検討している方法です。

■ ハリファックス市:時間制限+静音ボールという“二段構え”の対策

ハリファックス市の Castle Hill Park は、もともとテニスコートでしたが、
2019年に一部をピックルボールとして利用できるようにしたところ、
コートと住宅の距離が わずか約10m と近かったため、住民から「音がつらい」という声が相次ぎました。
🔗 Addressing Castle Hill Pickleball Court Noise(PDF)
https://www.halifax.ca/media/88934

そこで市は、2023年〜2024年にかけて、段階的に次のような対策を行いました。

① 利用時間を短縮

本来の公園ルール:5:00〜22:00
→ ピックルボールだけ 9:00〜21:00 に短縮

② 時間外に使用されないよう、門を施錠

2024年シーズンは早朝プレーが続いたため、コートを施錠。

③ 市が静音ボール(ソフトタイプ)を支給

しかし、

  • 時間外プレーが続いた
  • 指定しない硬いボールが使われた
  • コートと住宅の距離が近すぎた

という問題が解消されず、最終的に市は

👉 コートのラインとネットを撤去し、別の場所に集約する

という判断をしました。

北米では、“移転”も選択肢として普通に検討されています。


■ アメリカ・シアトル:騒音条例に合わせて「利用時間」を固定

シアトルでは、3つの公園で騒音苦情が増加。

市の公園局は、建設・検査局と連携して実際に音を測定したところ、

👉 市の騒音条例値を超えるケースがある

と公式に報告されています。

Outdoor Racquet Sports Strategy(公式ページ)
🔗 https://www.seattle.gov/parks/about-us/projects/racquet-sports

この結果を受け、市は以下の時間を正式に設定しました。

  • 平日:7:00〜22:00
  • 週末・祝日:9:00〜22:00

さらに市は、

👉 時間外プレーの“日時入り写真・動画”が確認された場合、コートを施錠して利用制限をかける

と明記しています。

静音パドル義務ではなく、時間管理でバランスを取る方式です。

🔍 この事例からわかること

ハリファックスが「静音ボール+利用時間+場所の移転」を合わせて対応したのに対し、
シアトルは “条例に合わせた時間調整” が中心。

  • 大都市で住宅密度が高い
  • コートを移転する場所が簡単に確保できない

という事情もあり、
「どの時間帯なら周りに迷惑をかけずに楽しめるか」
というバランスをとる形で運用しているのが特徴です。


3. 距離を基準にしたガイドラインを公開する自治体もある


日本では珍しいですが、北米では
“住宅からどれくらい距離を確保すべきか” を公式文書で示す自治体もあります。

代表例が カナダ・サーニッチ市です

サーニッチ市(ブリティッシュコロンビア州)は、
ピックルボールの音に関する距離と対策のガイドラインを
正式な市の資料として公開している自治体のひとつ です。

🔗 公式資料:Saanich Pickleball Guidelines
https://www.saanich.ca/assets/Parks~Recreation~and~Community~Services/Documents/Parks~Parks~Trails~and~Amenities~Find~a~Park/Pickleball%20Guidelines%200921.pdf

この資料では、住宅とコートの距離を以下の3段階に分類しています。

50m 未満:原則として設置を推奨しない(大規模な防音対策がない限り)

住宅への音影響が非常に大きく、防音対策なしでの新設は不可。

50〜110m:防音対策が必要

防音壁・吸音パネルなどを併用することが条件。

152〜182m:専門家による評価が必要

地形(谷など)によって音が遠くまで飛ぶため、
専門家の判断が求められます。

このように、サーニッチは
距離 × 防音対策 × 地形 を総合基準として示しています。


4. 防音フェンス:高さ・配置・向きまで“自治体が具体的に示す”ケース

サーニッチ市のガイドラインは、防音壁の設置方法についても非常に具体的です。

① フェンスの高さは最低「約2.4m」

理由:
プレー時のパドル位置が見えなければ、音が直接届きにくい

平地の場合は、約2.4m以上を推奨

② コートを地面より低くつくり、土盛り(バーム)で囲めばコストダウン

資料では、

  • コートを地面より低くする(掘り下げる)
  • 出た土で “盛り土(バーム)” をつくる
  • バームの上に壁を設置すると壁の高さを抑えられる

といった“コストを下げる工夫”も紹介されています。

③ 壁が向かい合うと“反射音”が増えて逆効果

公式資料にはこう書かれています。

壁を平行に配置すると反射が起こり、効果が著しく低減する。
その場合、吸音パネルの追加が必要。

つまり、

「壁さえ作ればいい」わけではない。
配置と吸音材の組み合わせが重要。

④ コートの“向き”で音が飛ぶ方向を調整できる

  • ピックルボールの音は ネット方向に広がりやすい
  • そのため、ネットラインが住宅に向かない配置にすることで音を減らせる

🔗 公式資料:Saanich Pickleball Guidelines
https://www.saanich.ca/assets/Parks~Recreation~and~Community~Services/Documents/Parks~Parks~Trails~and~Amenities~Find~a~Park/Pickleball%20Guidelines%200921.pdf


5. 日本ではどう活かせる?


北米の対策をそのまま輸入することは、
日本の住宅密度や公園の規模では現実的ではありません。

しかし、海外の事例から得られる“実践可能なヒント”は多くあります。

① 新設段階で「音リスクの事前調査」を入れる

  • 生活音調査
  • 予想騒音レベルの分析
  • 近隣説明

これは日本でも即導入可能で、トラブル回避に最も効果的。

② 日本では「距離より防音壁」が現実的

  • 防音シートの追加
  • 遮音パネルの設置
  • 反射を防ぐ吸音材の配置
  • コートの向きを調整

距離が取れない日本だからこそ、
壁と配置で“音の通り道”を変える工夫が主役になります。

③ 利用ルールの“見える化”が騒音防止に効く

北米の例でも、掲示やパンフレットが重要な役割を果たしています。

日本でも、

  • 早朝・夜間の禁止時間
  • 静音用具の推奨
  • 声出しの配慮
  • 時間外利用の禁止

などを明文化することで、トラブルを防ぎやすくなります。

④ “移転・集約”という選択肢も日本向き

住宅密度が高い地域では、
騒音環境の良い場所にコートを集約し、多面展開する方式が有効。

  • 苦情が減る
  • 利用満足度が上がる
  • 運営管理も効率的

ハリファックスでも実際に採用された方法です。

⑤ 静音パドル・静音ボールは日本で最も導入しやすい

  • 推奨から始める
  • 施設予約で「静音タイム」をつくる
  • 施設側が静音ボールを貸し出す

静音用具なら、日本でもすぐに実現できます。


おわりに


静音対策は「規制」ではなく、
ピックルボールを長く、気持ちよく続けるための工夫。

海外の事例を見ると、
“スポーツを守るためにどう共存するか”
という前向きな姿勢がはっきりと伝わってきます。

日本でも地域に合った形で音対策が進むことで、
もっと安心して、もっと多くの人がピックルボールを楽しめる未来が広がるはずです。

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